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香港中部の銀行データセンターにて、ITディレクターはSLA報告書を眺め、苛立ちを隠せない様子だった。海外ITベンダーのライセンス料は来年さらに15%値上げされる予定であるのに、過去1年間の現地サポートはほとんど実施されていない。トラブルが発生するたびに、メール連絡、調整、リモートトラブルシューティング、必要に応じて現地訪問という長時間を要する手順が繰り返され、問題解決まで3日から1週間を要する状況が続いていた。
これは単独の事例ではなく、香港・マカオ全域の企業が共通して直面する課題である。
一方、深圳湾検問所ではAI搭載入出国審査システムの試運転が実施されていた。技術チームの最大の懸念は、システム停止時に審査処理効率がどれほど悪化するかという点だ。
一方で国際ベンダーによるコスト高騰と対応遅延、もう一方でビジネス停止を限りなくゼロに抑える必要があるAI活用現場。従来型データサービスソリューションでは対応しきれなくなっている。
AI時代においてデータはコア資産となり、システム耐性は企業存続の鍵となる中、このギャップを埋める存在はどこにあるのか。
上海発、科創板上場ソフトウェア企業Info2softがその答えを提示する。
詳細を探るため、DataYuan編集長の張彦飛は香港イノベーションテクノロジー展にて香港・マカオ市場責任者の陳裕峰氏に単独インタビューを実施した。
なぜ国産データサービスプロバイダーが香港・マカオにおいて国際大手に代わり得るのか。答えは市場構造にある。
同地域の企業が海外ベンダーと取引する際に抱える主な課題は以下の通りである。
サプライチェーンの混乱によりハードウェア価格は上昇し続ける一方、国際ベンダーのライセンス料は毎年値上げされる。基本料金、ノード料、容量課金、上位機能利用料などを合算すると、3年間で総保有コストが2倍に膨れ上がるケースも少なくない。顧客は現在、より良い選択肢を求めている。
香港金融管理局は厳格なシステム安定性を要求し、SLA基準は99.99%が最低ラインとなっている。しかしグローバルベンダーの現地サポート人員は限られており、エンジニアがシンガポールやオーストラリアから派遣されるケースも多い。対応時間の遅延や地域特有の知見不足により、規制要件を満たすことが困難な状況だ。
香港の企業はITチームの規模が小さい傾向にある。ストレージ、スイッチ、バックアップソフトまで多岐にわたるハードウェア依存型の従来ソリューションは運用負荷を大幅に増大させる。トラブル発生時、顧客自身でトラブルシューティングを実施することができず、完全にベンダー依存となる。
三重データバックアップ(STDB)、重要資産保護ポリシーなど新たな規制が基準を引き上げている。従来のソリューションは開発期間が長く、カスタマイズ費用も高額で、顧客にとって採算が合わなくなっている。
これに加え、ハードウェア価格の高騰、AWSをはじめとする海外クラウドの障害、テンセントクラウド・アリクラウド・チャイナモバイルクラウドといった中国系クラウドの香港展開加速など、複数の要因が市場の構図を塗り替えている。
国産ベンダーにとって市場参入の好機が訪れているが、このチャンスを掴めるのはどの企業か。
2011年設立、2023年に科創板上場を果たしたInfo2softは、6000社を超える顧客、400社以上のパートナーと連携し、160件超のコア特許を保有する。
IDCの調査によると、Info2softは2016年から2025年まで12年連続で中国国内データ複製・保護市場シェア1位を獲得し、2025年の市場シェアは13.5%に達する。
代表的な導入事例として工商銀行(ICBC)が挙げられる。同行はVeritas NetBackupからInfo2soft i2Backup V9へ切り替え、数百ペタバイト規模のデータ保護を実現。新規ハードウェア投資なしでシームレスな移行を完了させた。
Info2softの事業軸は明確で、データ移行、バックアップ、災害復旧までをカバーするライフサイクル全体のデータソリューションを提供する。
エコシステム面ではファーウェイ、H3C、浪潮、レノボなど大手ベンダーと互換性を確保。香港では現地ディストリビューターやシステムインテグレーターと連携し、地域の商習慣に適応した事業展開を進めている。
2024年6月に国際本部として香港オフィスを開設して以来、金融業を中心に10社を超える現地顧客を獲得し、政府系プロジェクトへの参入も開始した。
香港現地サポート、華南チームによる導入支援、本部によるバックエンド支援の3段階サービスモデルにより、迅速な対応と安定したサービス提供を保証する。
今こそ事業拡大を進める理由は、複数の潮流が重なり合っているからだ。
AIはこの流れを加速させている。
Info2softはAI活用に先行して取り組んでいる。
実際の事例として、香港のAI搭載入出国審査システムの災害復旧基盤を支援し、公共サービスに不可欠な業務継続を確保した実績を持つ。
香港は出発点に過ぎない。同拠点を国際本部とし、全世界展開の足場とする。
同社はすでにシンガポール、ヨーロッパ、中東、日本への進出を進めており、「顧客の存在する場所へ進出する」という単純な戦略を掲げる。
Info2softの目標は明快で、国内シェア1位から世界的プレイヤーへ成長することだ。
ハードウェア輸出と異なり、ソフトウェアのグローバル展開は静かな道のりであり、技術力、製品の深度、サービス品質、何より信頼が必要となる。
Info2softの香港での成功は政策による後押しではなく、製品が生み出す価値に基づいた顧客の自主的な選択によるものだ。
これは1社の成功事例に留まらず、中国ソフトウェア産業全体に広がる可能性を示している。
香港・マカオは序章に過ぎない。国際基準、厳しい顧客、厳格なコンプライアンスが共存する試金石として、この地域での成功が全世界進出への扉を開く。
デジタル市場が世界的に変化する中、Info2softをはじめとする企業が中国テクノロジーの次の歴史を紡いでいく。